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【製品解説】Postgres Enterprise Manager 10.6

October 04, 2026

企業向けPostgreSQL運用管理ソリューションである「Postgres Enterprise Manager(PEM)」の最新バージョン10.6がリリースされました。大規模なPostgreSQL環境やマルチクラウドでのデータベース運用において、統合的なモニタリングとパフォーマンス分析、自動化された運用管理を実現するPEMは、データベース管理者(DBA)やインフラエンジニアにとって不可欠なツールです。本記事では、PEMの基礎知識からアーキテクチャ、そして最新バージョン10.6 で追加された注目の新機能や改善点について詳しく解説します。

音声ディープダイブ

本記事のポイントを約13分で学べる対話型ポッドキャスト(音声ディープダイブ)です。通勤中や作業中のながら聴きにぜひご活用ください。


PEMとは?

Postgres Enterprise Manager(PEM)は、EnterpriseDB(EDB)社が提供する、PostgreSQLおよびEDB Postgres Advanced Server(EPAS)環境のための包括的なエンタープライズ管理・モニタリングプラットフォームです。

オープンソースのUI管理ツールである「pgAdmin 4」をベースに開発されており、親しみやすいWebベースのグラフィカルインターフェース(GUI)を通じて、数百台規模のデータベースサーバー群を単一のコンソールから統合的に管理・監視・最適化できる高度な機能を備えています。

PEM 10.x がサポートするPostgreSQL環境

PEMは、主要なすべてのPostgreSQLディストリビューションおよび主要バージョンに対応しています。

  • PostgreSQL(オープンソース版): バージョン 14, 15, 16, 17, 18
  • EDB Postgres Advanced Server (EPAS): バージョン 14, 15, 16, 17, 18
  • EDB Postgres Extended Server (PGE): バージョン 14, 15, 16, 17, 18

小規模な開発・検証環境から、ミッションクリティカルな大規模本番環境、高利用率なマルチクラウド環境まで、同一の操作感でPostgreSQLエコシステム全体を統合一元管理できる点が最大の強みです。

PEMの主なメリット

PEMをデータベース運用基盤に導入することで、運用負荷の劇的な削減、システム障害の予防、リスク低減、そしてTCO(総保有コスト)の最適化など多大なメリットを享受できます。

1. 大規模環境の統合一元管理(Management en masse)

オンプレミス、仮想環境、パブリッククラウドに分散して存在する多数のPostgreSQLインスタンスを、単一のグローバルダッシュボードから可視化・管理できます。サーバーの稼働状態(Up/Down)、リソース使用率、アラート発生状況を一目で把握できます。

2. プロアクティブな障害検知と高度なアラート機能

CPU、メモリ、ディスクI/O、テーブルのブロート(膨張)、接続数、レプリケーション遅延など、数百種類の主要メトリクスに対して細かな閾値を設定可能です。重大な障害へ発展する前に予兆を検知し、Email、Webhook、SNMPトラップ、Nagios連携などを介して迅速に管理者に通知します。

3. 高度なパフォーマンス診断とボトルネック追跡

「Performance Diagnostics」機能や「SQL Profiler」モジュールを使用することで、データベースの負荷を引き起こしているクエリや待機イベント(Wait Events)をビジュアルに追跡・分析できます。ボトルネックとなるSQLの特定やインデックスの調整作業を迅速化します。

4. コストに優れたライセンス体系

EDBのStandardまたはEnterpriseサブスクリプションを保有している場合、監視対象のPostgreSQLコア数に応じたライセンスが適用されていれば、PEMサーバー自体やバックエンドデータベース、PEMエージェントが使用する計算リソース(コア数)に対して追加のライセンス費用が発生しません。費用対効果に非常に優れています。

PEMの仕組み

PEMは、高いスケーラビリティとセキュリティを実現する分散アーキテクチャを採用しています。システムは主に「PEM Server」「PEM Agent」「PEM Web Client」の3つの要素で構成されています。

構成要素概要と主要な役割
PEM ServerWebサービス(WSGI/NGINXまたはApache)とバックエンドPostgreSQLデータベースで構成される中核コンポーネント。収集した時系列データやメタデータ(pem, pemdata, pemhistory スキーマ)を集中管理します。
PEM Agent各監視対象ホスト(または専用監視サーバー)に配置される軽量エージェント。OSやPostgreSQLの統計情報(プローブ)を収集し、SSL/TLS暗号化通信(libpq)を用いてPEM Serverへ安全に送信します。
PEM Web ClientWebブラウザからアクセスするGUIコンソール。グラフィカルなダッシュボード閲覧、オブジェクト管理、SQL実行、アラート・ジョブ設定などを一括して行えます。

PEM 10.6 の強化点

最新リリースとなる「Postgres Enterprise Manager 10.6」では、運用の自動化、データベースバックエンドのパフォーマンスチューニング、監視精度の向上、自由度の高いシステム拡張など、エンタープライズ運用を強力に支援する新機能と改善が行われています。

1. ジョブテンプレート(Job Templates)の導入

従来は個別エージェントや特定サーバーごとに定義する必要があったバッチ・メンテナンス処理を抽象化し、再利用可能な「ジョブテンプレート」として管理できるようになりました。定義したテンプレートを複数の対象サーバーへ一括配信(ファンアウト)できるため、大規模環境における定型作業の展開と管理工数が劇的に削減されます。

2. 自動チューニングツール「pem_advisor」の追加

PEM自体のバックエンドデータベースのパフォーマンスを最適化するための、スタンドアロン型CLIチューニングツール「pem_advisor」が新たに提供されました。

  • 安全な分析: 読み取り専用で接続するため、バックエンドDBに影響を与えずに分析可能。
  • 多角的なパラメータ診断: メモリ割り当て、WAL・チェックポイント、Autovacuumの追従性、JIT設定、レプリケーション等を総合評価。
  • 豊富な出力形式: ターミナル表示のほか、Markdown、SQL、JSON形式に対応し、チューニング案のレビューや適用を円滑化。

3. SMTPによるレポート自動配信の強化

定期生成されるシステムレポート(Scheduled Reports)を、SMTP経由で指定のアドレスへ電子メール(HTMLまたはJSON形式)で自動送信可能になりました。レポートの生成・レンダリング処理はバックエンド側で完結するため、クライアント側に負荷をかけずに管理用レポートの配布を自動化できます。

4. プローブ診断と自己監視機能の進化

データ収集メカニズム(プローブ)の正常性をチェックする「Probe Diagnostics」機能が大幅に強化されました。さらに、サーバーログ内のPANIC/FATAL/ERRORレベルのメッセージを検知するプローブや、テーブルサイズに応じた閾値判定を行うAutovacuum遅延アラートが追加され、不要な誤検知(ノイズ)を減らしつつ重大な不具合を迅速にキャッチできます。

5. 最新エンタープライズOSのサポート

最新のLinuxプラットフォームである Red Hat Enterprise Linux (RHEL) 10 および Debian 13 が、サーバー/エージェントの動作環境として正式にサポートされました。

6. 古いツールの非推奨化(BARTサポート削除)

旧式のバックアップツールである「BART (Backup and Recovery Tool)」のサポートが完全に終了しました。エージェント、DBスキーマ、UIから関連コンポーネントが取り除かれ、より軽量でモダンなコードベースへと刷新されています。

最新ドキュメント

Postgres Enterprise Manager(PEM)10.6 は、大規模化・複雑化が進むPostgreSQL運用現場のニーズに確実に応えるアップデートとなっています。ジョブテンプレートによる共通化や、バックエンド自体の最適化を可能にするpem_advisorの導入により、DBAの運用管理工数はさらに削減されます。効率的で堅牢なデータベース運用監視基盤の構築に、ぜひPEM 10.6 の活用をご検討ください。


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